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原田マハさんの『楽園のカンヴァス』という作品を読みました。アンリ・ルソーの『夢』にそっくりな作品『夢をみた』の謎、もといルソーの生涯に迫る物語です。
作者は非常にアートに詳しい方なので、アート全般に興味ある人も私みたいにアートに疎い人も楽しめる屈指の絵画ミステリーでした。最後の一ページまでおもしろく読後感も非常に爽やかな傑作でしたので感想を書いていきます。
ガチで面白い小説おすすめ小説2024!読み始めたら止まらない名作を厳選紹介『楽園のカンヴァス』とは
『楽園のカンヴァス』は原田マハさんの小説で、2010年から2011年にかけて『小説新潮』で連載されていました。連載されていた当時のタイトルは『夢をみた J’ai rêvé』。読んだ後にこのタイトルを見ると少しジーンと来ますね。
単行本の表紙にアンリ・ルソーの『夢』が採用されています。粋ですね。
『楽園のカンヴァス』のあらすじ
ニューヨーク近代美術館(MoMA)のアシスト・キュレーターのティム・ブラウンとソルボンヌ大学院の博士号を持つ早川織絵はある日スイスの大邸宅に招かれる。招待主はコンラート・バイラーと呼ばれる老人で多くの美術品を所有する伝説のコレクターだ。
ティムと織絵はそこでアンリ・ルソーの未発見の新作でありMoMAにある『夢』と酷似した『夢を見た』を目の当たりにする。バイラーはふたりに対して「この『夢を見た』の真贋を判定してほしい。そのためにある物語を読んでもらう」
説得力のある真贋を判定できた方に『夢を見た』を譲るとするバイリー。そして、二人はルソーの生涯を物語を通して体験していく…。
作者:原田マハについて
原田マハさんは日本の美術館やニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターの経験を経てフリーのキュレーターとして独立。その後、小説の執筆を始めたという異色の経歴を持つ作家さんです。
兄も有名な小説家・原田宗典さん。キュレーターの経験から藝術を題材にした作品が多いのが特徴ですが、ラブストーリーなども執筆しています。
『楽園のカンヴァス』の受賞歴
- 第25回山本周五郎賞受賞
- 第147回直木賞候補
- 第10回本屋大賞第3位
『楽園のカンヴァス』の主な登場人物
- ティム・W・ブラウン…ニューヨーク近代美術館 (MoMA) のアシスタントキュレーター。アンリ・ルソーに心酔している。上司と名前が非常に似ている。
- 早川織絵…ソルボンヌの大学院で博士号を最短で取得した新進気鋭のルソー研究者。
- コンラート・バイラー…伝説のアートコレクター。ティムと織絵にルソーの未発表作品の鑑定を依頼する。
- エリク・コンツ…バイラーの弁護士
- アンリ・ルソー…元税関氏で画家。日曜画家であり独特の絵柄のため生前の評価は低い。
- ヤドヴィカ…ルソーが思いを寄せる若き人妻。『夢』のモデルでもある。
- パブロ・ピカソ…キュビズムの創始者であるアートの巨人。いち早くルソーの才能を見抜き高く評価している。
『楽園のカンヴァス』を読んだ感想・書評
アンリルソーの『夢』に酷似した『夢を見た』の謎に迫るアート・サスペンス
アンリ・ルソーの代表作『夢』を展示するMoMAのキュレーターであるティム・ブラウンと新進気鋭のルソー研究家としてにわかに注目を浴びる早川織絵が伝説的なコレクターであるコンラート・バイラーに招待される。
彼らが見たのは『夢』とうりふたつの『夢をみた』という作品。圧倒的な作品からルソーの作品に思われるが、晩年のルソーは困窮しており『夢』を書き上げるので精いっぱいだったはず。『夢をみた』がルソーの作品であれば『夢』が贋作になる…?
この『夢をみた』の謎に迫るためにバイラーから言われたことは「1日1章ずつある物語を7日間読んでもらう。7日後にこの絵の真贋に対して適切な論評を述べたほうに権利を譲る」という望外の提案。
どう見ても本物の『夢をみた』に迫る迫真のアートサスペンスであり凄いエンターテイメント作品なんです。
物語に描かれるアンリ・ルソー、そして彼を尊敬するパブロ・ピカソ
『楽園のカンヴァス』は『夢をみた』の謎を追うティムと織絵のパートと、ルソーの生涯を描いた物語のパートで描かれています。劇中劇というようなかんじですね。
その物語の中で困窮しつつも製作に没頭するルソー、そのルソーに求愛されるもうとましく思っているヤドヴィカ、世間に評価されていないルソーを誰よりも早くそして深く評価しているピカソが鮮やかに描かれています。
特にピカソが出てきたくだりではちょっとテンションあがります。「すげえ、ピカソ出てきたよ…」というような気分になりました。
作者の絵画への深い造詣が藝術知らない人にさえもわかりやすく凄さと美しさを伝えてくる
私はいわゆる芸術には無関係の人生を歩んできました。ハッキリ言って無知です。
一方作者は、早稲田で美術学を学び、馬里邑美術館、伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務ととてつもない経歴。その後フリーのキュレーターとして独立するなど恐ろしいまでのキャリアです。
その造詣の深さは小説を読んでいるだけでもわかるんですが、非常にわかりやすいんです。何故アートに人々が夢中になるのかがわかります。すごい。
伏線の回収の仕方と謎の残し方のバランスが絶妙
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、伏線回収するべきところはキッチリ回収してます。なので読み終わった後のモヤモヤ感はないですね。一方で謎は謎として読者に判断をゆだねている部分も多々あり、そのバランスが非常に絶妙だなと思いました。
『夢をみた』というルソーの作品を物語の中でうまく使ってるなあと特に最終章は思いましたね。特に最後の一ページはグッとくるものがありました。
まとめ:『楽園のカンヴァス』は傑作
『楽園のカンヴァス』は藝術に詳しくても詳しくても楽しめる屈指のエンターテイメント作品です。
そして芸術に対する入り口にもなりうる作品ですね。私、ちょっとルソーの絵を見てみたくなりググりました。是非一度読んでほしい1冊ですね。