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池井戸潤の政治小説『民王』の感想 | 政治とは何かを考えさせる痛快な作品

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「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」…池井戸潤作品の多くは逆境からの反撃、大逆転が痛快な作品の印象が強いと思います。敵役も必要以上に小憎たらしくドラマで見るとその顔芸に注目がいくほどです。

 

そんな池井戸潤の作品の中で『民王』(たみおう…と読みます)は軽快で滑稽な喜劇のようでもあり、池井戸作品特有の勧善懲悪てきな面白さもかねさなえた名作(迷作?)でもあります。

 

読みやすい池井戸作品の中でも飛び抜けて読みやすいので読書初心者にもおすすめな『民王』の感想を書いていきたいと思います。

 

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作品概要:『民王』とは

民王 / 池井戸潤

民王は企業小説の得意な池井戸潤の作品では異色の「政治喜劇」小説。麻生政権時代の自民党をモデルにしており、実際にあった政治を風刺した描写などが特徴。また、ややSFチックな要素も池井戸潤作品の中では異質。

池井戸作品らしく痛快な逆転描写は健在も、全体を通して流れるコメディテイストが新鮮な作品です。自民党をモデルにしているのでリベラル寄りの正統を強く支持している人は楽しめないかもしれません。


作者:池井戸潤さんについて

池井戸潤さん写真

池井戸潤さんは岐阜県出身の小説家で慶応義塾大学卒業、三菱銀行に就職した元エリートでもあります。『果つる底なき』でデビュー後、銀行ミステリーのイメージが強くつく。

しかし、本人はエンタメ作家として評価されたい想いが強かったため「人」に焦点を当てた作品を書くようになった。

代表作

多くの作品がドラマ化されております。

  • 半沢直樹シリーズ
  • 下町ロケットシリーズ
  • 陸王
  • 民王
  • ルーズベルトゲーム
  • 七つの会議

など


『民王』:受賞歴

  • 吉川英治文学新人賞(2010)

メディアミックス

実写ドラマ『民王』(2015 / TV朝日)

金曜ナイトドラマ 池井戸潤原作 民王|テレビ朝日
テレビ朝日 「金曜ナイトドラマ 池井戸潤原作 民王」番組サイト。内閣総理大臣・遠藤憲一、誕生!菅田将暉、民放連ドラ初主演!W主演で池井戸潤と初タッグ!累計33万部発行の人気作を初ドラマ化

『民王』は2015年の深夜帯に実写ドラマ化されております。オリコンのコンフィデンス・ドラマアワードで第1回作品賞はじめ4部門、ギャラクシー賞月間賞、ザテレビジョンドラマアカデミー賞4部門などを受賞しており知名度は低いですが評価の高い作品です。TVドラマ終了後にも事後のエピソードやスピンオフなどを配信しました。

キャスト

菅田将暉の連ドラ初主演作品。ここから彼の快進撃が始まった。

  • 武藤泰山…遠藤憲一
  • 武藤翔…菅田将暉
  • 南真衣…本仮屋ユイカ
  • 村野エリカ…知英
  • 貝原茂平…高橋一生
  • 狩屋孝司…金田明夫
  • 冬島一光…猪野学
  • 蔵本志郎…草刈正雄
  • 新田理…山内圭哉

またドラマ『民王』は動画配信サービス「Hulu」「U-NEXT」で見ることができます。どちらもスピンオフまで網羅してますので両方おすすめです。

「民王」向けVOD比較表
 HuluU-NEXT
料金933円1,990円
(1200pt付与)
無料期間初回14日間初回31日間
ダウンロード
ドラム
スペシャル
スピンオフ
番外編

Huluを2週間無料で試す

U-NEXTを31日間無料で試す

 

あらすじ

国会議事堂

短命に終わった前政権の後を継いで総理大臣になった武藤泰山。答弁の途中で意識が遠くなると、大学生の息子・翔と人格が入れ替わっていた。周囲の混乱を避けるために翔は総理大臣として、一方泰山は翔の代わりに就職活動をすることに…

政治に無知、漢字も読めない翔のひどい国会答弁、面接官を論破して就活をだめにする泰山。翔と泰山を中心に与党だけでなく野党の党首、公安、そして企業を巻き込んだドタバタ政治コメディ。

二人は国家の危機と就職活動を乗り切ることができるのか?

 

主な登場人物

 

『民王』は与党・民政党の政治家、総理大臣・武藤泰山の息子である武藤翔の交友関係、民政党のライバル関係である野党と3つのグループを巻き込んだドタバタコメディです。

主人公

武藤泰山

短命に終わった前期2つの政権の後を継いで総理大臣に。与党民政党の代表。もともと理想に燃える政治家だったが派閥抗争に明け暮れる中で忘れてしまっている。麻生太郎をモデルにしてると思われる。

武藤翔

泰山の息子。日々遊び歩く馬鹿な大学生で就職活動中。政治に全く興味がなく漢字も苦手。就職活動をしている企業もバラバラだが、彼なりの正義感で企業を選んでいることがわかる。

与党・民政党の政治家・関係者

狩屋孝司

官房長官で泰山の側近。女好き。

貝原茂平

泰山の秘書で非常に優秀。泰山にも率直にものを言う。

真田武彦

防衛大臣であり泰山と翔が入れ替わった理由を調査している。

城山和彦

民政党の大物政治家。派閥のドン。泰山に解散を迫る。

新田理

公安一の切れ者。諜報、格闘ともにずば抜けている。

武藤翔の交友関係

南真衣

翔の同級生で学生起業家で。

村野エリカ

翔の同級生だが非常に好戦的。政治家志望。

野党の政治家・関係者

蔵本志郎

野党第1党、憲民党の党首。泰山のライバル。

冬島一光

野党第2党、共和党の党首。

 

『民王』を読んだ感想

総理大臣とバカ息子の体が入れ替わる…という現実離れした設定をそもそも池井戸潤のようなリアルな作風を得意とする小説家が書いた点にまず驚きました。ただ、その入れ替わりをたんなるオカルトにせずに陰謀として書いてるのが池井戸さんらしいといけばらしいけど。

さて、この『民王』。読むとわかりますが実際の政治の世界であった出来事を多数風刺しております。麻生政権前後の出来事が多いですね。

  • 漢字の読めない総理大臣…麻生さんをモデル
  • 大臣の酩酊状態での会見…中川昭一さんの会見です。これも陰謀説ありますが…ドラマ版では中川さんがなくなったこともありカットされています。
  • 日教組の学力を批判…日教組に反感のある中山議員の発言

などなど。

ただ、池井戸さんは単純な政権批判をしていないのがよいところです。「なぜこんなくだらないことで騒いでるのか?」「ちゃんと政治をやってくれよ」という国民の声を代弁してると思います。

その政治に対する不満、政治報道のレベルの低さを痛烈に批判するシーンはかなりスカッとするはず。これぞ池井戸作品。

 

ネタバレ

さてネタバレ込みの感想を少し。

この事件の主犯は政権奪取をもくろむ共和党と規制緩和を望む真衣でした。終末医療の現場の問題が企業とそれに癒着する与党の間で行われていたこと。その現場を見て泰山は政治家として目を覚まします。

また、翔の代わりに就職活動をする中で泰山は翔の持つ正義感に心打たれます。

この事件を通して政治家としての矜持を取り戻すさまはすごくよかったと思います。

 

最後に

政治小説ではありますが非常に読みやすくコミカルな作品です。しかもただ面白いだけでなく考えさせられることもありますし、スカッとするし、感動もするいい小説です。

すでに書いていますがドラマの出来も非常に良いらしいのでドラマか小説をぜひ見てみてください。


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